成蹊大学文化会手帖

文化会のあれこれ

<文芸倶楽部><部長インタビュー>「高校の昼休みのように、気を抜ける場を」

現在、成蹊大学文化会本部には四十以上の団体が所属しています。団体それぞれの歴史と部員の充実した学園生活への責任をもつ部長は、部活をどのように捉え、何を目指すのか。そんなことを我々文化会本部が聞いてまわる部長インタビュー、今回は文芸倶楽部です。

 

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佐藤 今日はよろしくお願いします。
 
前田部長(以下役職及び敬称略) よろしくお願いします。
 
佐藤 ミイは嫌いじゃないですか? 大丈夫ですか? (ミイは文化会本部室の所有物で、文芸倶楽部と直接的には関係がない)
 
前田 大丈夫ですよ笑
 

 

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佐藤 文芸倶楽部の普段の活動についてお聞きしていいですか?
 
前田 文芸倶楽部という名前を出した時に、「手芸とかするのかな?」という声が多いのですが…活動の軸としては、本を読んだり、書いたりすることがメインになっています。集まってくる人の主軸も、やはり、本を読んだり、書いたりする人ですね。ものを 書くことは、こだわりがないと苦労が多くて好きにはなれないので、やっぱり癖の強い部員が多い、そしてその癖の強い部員と過ごすのが好きな子が多いとい う、そんな印象ですね。
活動日が一応火曜日ということにはなってるんですが、実際には、場に居合わせた人が各々活動するという感じで、運動部のような、どこどこに集合して…というようなわかりやすさはあまりないです。その代わりに集まった面子で突発的に活動が起こったりもして、こういう連作の作品ができたりもします。これが400字詰め原稿用紙なんですけど、100字ずつ4人で書いて一つの作品にするという遊びが突発的におこなわれたり、部室にいること自体が活動みたいな感じになってますね。
 
佐藤 部室によくいる人というのが決まってくるということはありますか?
 
前田 そうですね。「部室勢」という言葉があったりします笑 他には、TRPGで遊んでリプレイを書き起こしたりとかもしています。定期的に「やろう!」と定めて行っている活動としては読書会というものがありまして、この作品を「あらかじめ読んできてね」というのを決めて、一箇所に集まって、「これはこういう解釈じゃないか」とか「こういう意図じゃないか」とか話し合ったりします。
 
佐藤 硬軟織り交ぜて、という感じでしょうか。
 
前田 そうかも知れないです。私自身は、いわゆる文学部的な硬派な本も読みますが、ライトノベルも読みますし、部員には、ライトノベルしか読まない子もいて、何も読まないけど、物語を書く子もいて、色々ですね。
 
佐藤 部長自身が文芸倶楽部に入部されたきっかけは何ですか?
 
前田 私はもともと高校時代に文芸部に入ってまして、それがきっかけで文芸倶楽部の新歓部屋に足を運んだのですが、そこいた先輩方がみんなキャラが濃くて、新歓部屋がとても楽しかったんですね。ここに入ったらきっと4年間楽しいなって思って、入りました。
 
佐藤 4年間楽しいなって想像できるってことが大切ですよね。
 
前田 そうなんですよね。どんなに活動内容が自分に合うと思っても、入ってみたら雰囲気が違うなってことはあると思います。
ここ3年か4年ぐらいは、どばどばって入部してきて、1年経つにつれて活動が合わなかったり、雰囲気が合わなかったりする子が辞めていくということが多いですね。
 
佐藤 それでは部員数も結構多かったりするのでしょうか?
 
前田 新入部員だけで20人、全体では大体40人ぐらいです。私たちの代(3)5人で2年生が15人ぐらい、います。学年が上になるにつれて部員が減っている通り、残る子しか残らない部活ではあると思いますね。文化祭を除いたすべての活動は有志で構成されているので、離れていってしまう子は授業でいつの間にか居なくなっているように、来なくなってしまいますね。
 
佐藤 部活として引き止めるようなことはしない?
 
前田 そうですね。もともと新歓も9号館の4階という場所ですが、狙っている子は来てくれるという感じなので。今年はビラを配ったりとか、当社比で笑 派手に広報したので沢山入ってくれたのかなという感じです。
私が入部したのは「部活が楽しそうだから」でしたけれども「部室が使いたくって」とか「雰囲気が気に入って」と言って4年まで活発に部室にだけ訪れるという方もいます。
 
佐藤 そんなに素敵な部室なんですね。伺いたかったです。
 
前田 いやー、男子大学生が一人暮らしをしているような部屋なので。文芸倶楽部のくせして漫画本が多いんです。
 
佐藤 そういったものを求められる方も多いんじゃないかと思いますよ。しかし、漫画研究会(漫画研究会ペルシャ猫)があるからには、やはりこちらは本を中心に活動しているのでしょうか。
 
前田 漫画研究会と兼部の人が二人だけいますが、本当に彼らと私たちは重ならないですね。ちょうど住み分けができている感じです。彼らはメジャージャンルでハイ テンションで語り合うのが好きなイメージですね。私たちは、反響が普段の場でほとんど得られないようなものを、「これが好きなんだって」チラッと出した時 に、「あっ、知ってる知ってる」という人が必ずいる部活です。だから、メジャージャンルに弱いんですけれども。
 
佐藤 雰囲気もこちらの方が落ち着いている?
 
前田 ひそひそしていますね笑 漫研さんは新歓部屋いっても雰囲気が賑やかですが、言ってはなんですが私たちはウェイ感が持てない部分が多くて。納得したのが、「高校の昼休みに仲良しと 窓際で駄弁っているとき」のテンションをその侭持ち込んでいるという後輩の比喩ですね。だから、疲れた時に部室に来るという感じですね。確かになあと思い ました。
 

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佐藤 具体的には、部員にはどんな本を読まれる方が多いですか?
 
前田 偏食家の集まりという印象です。SFしか読まないという人もいるし、文学しか読めないという人もいるし、読んだことはないけど、ゲームしかしないけど、自分で創作をするよという人もいれば、二次創作しかしない人もいますね。
 
佐藤 それでも、それぞれが話し合えるんですね。
 
前田 懐の深い場所ではあるかなと思います。相手が自分と違うからという理由で糾弾する場所ではないので、そういう居心地の良さはあるのかな?と思います。
 
佐藤 例えば、一つのジャンルしか好きじゃないって人でも、入部すれば、それに応答できる人が居るということですか?
 
前田 マイナージャンルを広く浅く知っている人と、マイナージャンルで深くまで掘っちゃった人の二種類という感じですね。どのジャンルにも掠らないけど、誰かが語っているのを興味深く聞ける人が多いと思います。
オタク的な語りが苦手な人ってきっといると思うんですよ。でも、うちの部活はむしろそれを歓迎する側なのかなという感じがします。
 
佐藤 文芸倶楽部に様々な形でこれまで携わってこられたと思いますが、そのうちで最も感動したこと、あるいは、印象に残っていることはありますか?
 
前田 例年、本に対して愛着のある人が部長になることが多いのですが、昨年度の部長は本を読まない部長でした。運動部から転部してきた人です。その人は「文芸倶楽部を運動部にする」というテーマを持った人でして、例年赤字を出していた欅祭展示(文芸喫茶)を、 シフトを綿密に組み、クオリティを上げ、衣装を浴衣に統一、接客マニュアルを作り、そういう徹底を行って、黒字にしたんですね。それは革命的だったので、 印象に残っています。その展示が盛況だった時は「楽しいな」と思ったのですが、文芸部らしかったかと問われるとわかりません。文芸部らしいなって思った瞬 間としては、部室とか、夏合宿とかで皆でだらけている時に、物語の引用をしながら、長い時間共に過ごすことで出てきた生身の自分に基づいて話したことでしょうか。長い時間一緒にいる中で、「打てば響く」みたいなことが徐々に起こるようになってくるんですね。言葉を使うということは、自分の言い知れぬ気持ちをどうにか形にしたいと思っていることなので、どうやって相手を理解しようみたいな、「もがき」みたいなものをお互い必死にする、その時間があったりと か。個人的経験の共有が、言葉とか、自分が読んだ物語を通して起こるというのが、私にとっては、この部活の醍醐味です。友達と表面的な関係を一生懸命に作って、「ああ疲れたな」というのとは、真反対のところにあるものが求められるかなと思います。
自分の後ろ暗いところとかを共有してるけど口には出さない、家族的な雰囲気というのは、ここにあるなとよく感じますね。普通の枠に収まるのに必死でがんばるというのとは反対側にあるような。なかなか表現が難しいのですが。ただ、全員が全員そうというわけではありません。
 
佐藤 そういうことが起こる可能性を持った部活ということですか?
 
前田 そうですね。高校の昼休みの延長という感じです。でも、これは私が感じている空気なだけで、他の子にとってみれば違うと思いますけどね。
私の目標は、全員が「高校の昼休み」のように気を抜ける場を作ることですね。懐の深さを全員に供給できる場でありたいです。
 
佐藤 ありがとうございました!
前田 こちらこそ、ありがとうございました!
 

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文責:佐藤未来<文化会本部>

写真:堀口喜平<写真部>